大学紹介令和3年度学位記授与式式辞
式辞
令和3年度の学位記授与式を挙行するにあたり、北海道教育大学の教職員を代表して、卒業生?修了生の皆さんにお祝いと期待の言葉を述べたいと思います。
【全学】保護者の皆様には、これまで本学の教育?研究にご理解を賜り、北海道教育大学基金?修学支援事業等への厚いご支援を賜りましたことに対し、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
【札幌】本日は、同窓会の皆様方のご参列をいただいて、令和3年度の学位記授与式を挙行することができました。皆様に厚く御礼申し上げます。
【岩見沢】本日は、後援会、同窓会をはじめとする、来賓の皆様方、そして保護者の皆様方のご参列をいただいて、令和3年度の学位記授与式を挙行することができました。皆様に厚く御礼申し上げますとともに、心よりお祝い申し上げます。
学部卒業、(函館校:養護教諭特別別科)並びに大学院修了の皆さん、卒業?修了おめでとうございます。本年度は1,296人の卒業?修了生を世に送り出すことになりました。これから大学院に進学して学びを深め、実践的な指導力と研究力をさらに磨く人も、社会に出る人も、北海道教育大学で学んだことに誇りを持って生きていって欲しいと思います。
想定外の新型コロナウイルス感染症の影響を受けた皆さんにとっては、「卒業?修了おめでとう」と言われても、どこか腑に落ちないものを感じているかもしれません。私はと言えば、皆さんとは日頃直接的な接点はほとんどありませんが、このコロナ禍の中で、思いがけず、皆さんが地域に認められ、受け入れられ、愛されていることを教えられました。新型コロナウイルスの感染拡大が激しさを増し、全国的にも学生の経済的困難が伝えられていた頃、食品や生活必需品、現金をそれぞれのキャンパスに直接届けてくれた近隣住民の方々がたくさんいました。この心温まる出来事を知って、地域の皆様に深い感謝の気持ちが湧いてくると共に、これは皆さんと皆さんの指導に当たってこられた先生方の、これまでの様々な活動や努力の賜であり、また、皆さんの将来を見据える親心と励ましの心から生まれたものだと気付かされました。
そのような出来事と皆さんの頑張りを心に刻みながら、改めて心から「卒業?修了おめでとう」と皆さんに言いたいと思います。
「新型コロナウイルス感染症」。やはりこの話題を避けて通ることができないような気がします。皆さんもこの名前を口にしたら、色々と言いたくなることがあるのではないでしょうか。先日、皆さんの気持ちを代弁しているのではないかと思える投稿に目が止まりました。「新型コロナの流行で、時間が『止まった』」と書いた大学4年生の投稿です。「サークル活動はできずに引退、飲食店のアルバイトは休業、留学も断念」とあり、「この4月、(中略)悔しさと怒りと絶望をポケットに詰め、我慢とマスクとパソコンだらけの思い出を両手に抱えて歩き出す。」とのやりきれない思いと、「私の人生はこれから。春からまた、頑張りたい。」と、諦めきれない気持ちを押し込めながら前を向く決意を表明していました。共感できる人、多少思いを異にする人、もっともっと言うことがあるじゃないかとこれでは不満な人、人それぞれ様々な感慨を覚えるかもしれませんが、「自分の気持ちを代弁している部分は確かにある」と感じることができるのではないでしょうか。
もう一つ、コロナ禍におけるオンライン授業との関連で考えさせられる調査がありました。「PROGテスト」という、社会において一般的に必要とされる能力に関する大学生の調査です。大学1年次と3年次にそれぞれテストを受け、それらの能力の伸びを調べます。これを、大学で2018、19、20年と学んだ学生と、2019、20、21年と、3年間学んだ学生とを比較したものです。後者はまさにコロナ禍に巻き込まれた学生であり、この2万556人の結果を見ると、「課題発見」「実践」「計画立案」の各力については、コロナ禍前の学生に比べるといくらか低い程度ではあったものの、一定の伸びが認められる一方で、「行動持続力」「協働力」「親和力」「統率力」については、コロナ禍前の学生では伸びていたのに、コロナ禍に巻き込まれた学生では逆に低下していました。この調査を行った研究員は、「オンラインに変わってから、学生同士の議論を伴うグループワークが減少したことと、コロナ禍による活動制限が影響したのではないか」と分析していました。
関連して、ある脳研究者による実験も新聞で知りました。学生5人を一グループにして、対面とオンラインで会話してもらい、脳の活動を測定します。対面で顔を見ながら会話しているときには、脳反応の周波数が同期するのに、オンラインではそれが一切見られないそうです。同期しないことの理由の一つが「視線がずれていること」だと述べています。「脳活動が同期しないということは、オンラインで情報は伝達できているが、脳にとってはコミュニケーションになっておらず、感情が共感していない、つまり、相手と心がつながっていないことを意味する」、と説明しています。
この共感のなさ、コミュニケーション不全になっていることが、先の「協働力」「親和力」の形成にも影響を及ぼしているとすれば、今後、オンラインに頼らざるを得ない状況が続く限り、その在り方を工夫しなくてはなりません。ただ、そのためにはもう少し専門家の情報が必要です。
本学では対面とオンラインを組み合わせた対応が多かったと聞いていますので、皆さんにとって大きな悪影響がないことを願っています。
さて、皆さんがこれから生きていく世界では、教員?公務員?民間のいずれの職に就こうと、SDGsやカーボンニュートラルといった、地球と人類の存続そのものに関わる複合的な問題に、どんな形にせよ関わりを持ちながら生きていかざるを得ません。個人や、組織がそれぞれの立場で、またこのグローバル社会の中で何ができるかを考え、多様な考えを突き合わせながら最善の策を選択し、それを国の政策として反映させる道を模索しながら国際的な協調の在り方にも思いを致し、この地球を将来に向けて守っていく必要があると思います。
人という生き物は、大きな群れをつくり、知識や経験を皆で共有し、またそれを次の世代に伝えながら発展を遂げてきました。その過程で、複雑で難しいことは、それを身につけた人が手取り足取り教えることを原点に、教育というシステムを作り上げて社会を繁栄させてきました。集団は血縁者だけではありません。そこでは、人が人を思いやる心や共感する心、協調しようとする心、怒りの感情を抑える心の働きを進化の過程で獲得できたからこそ今の繁栄につながりました。この人間が持つ良さを今回のコロナ禍の中で失ってはならないと思います。皆さんには、正しい情報を自ら理解?判断し、人が進化の過程で獲得してきた良さを将来に引き継ぎ、争いのない平和な文化的環境を維持しながら、これからの社会を牽引していってもらいたいと願っています。
最後になりますが、後援会及び同窓会の会員の皆様、また経営協議会委員の皆様、地域住民の皆様、そして北海道教育大学基金へご寄付をいただいた多くの寄付者の方々には大変感謝申し上げます。様々な面で本学並びに学生の成長を支えていただきました。
卒業?修了される皆さんも、その方々への感謝の気持ちを忘れずこれからの人生を送ってください。学び直したいと思ったとき、後輩のことが気になったとき、一回り大きくなった自分を先生に見てもらいたいと思ったとき、いつでも大学に来てください。
皆さんの活躍を期待しています。
令和3年度の学位記授与式を挙行するにあたり、北海道教育大学の教職員を代表して、卒業生?修了生の皆さんにお祝いと期待の言葉を述べたいと思います。
【全学】保護者の皆様には、これまで本学の教育?研究にご理解を賜り、北海道教育大学基金?修学支援事業等への厚いご支援を賜りましたことに対し、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
【札幌】本日は、同窓会の皆様方のご参列をいただいて、令和3年度の学位記授与式を挙行することができました。皆様に厚く御礼申し上げます。
【岩見沢】本日は、後援会、同窓会をはじめとする、来賓の皆様方、そして保護者の皆様方のご参列をいただいて、令和3年度の学位記授与式を挙行することができました。皆様に厚く御礼申し上げますとともに、心よりお祝い申し上げます。
学部卒業、(函館校:養護教諭特別別科)並びに大学院修了の皆さん、卒業?修了おめでとうございます。本年度は1,296人の卒業?修了生を世に送り出すことになりました。これから大学院に進学して学びを深め、実践的な指導力と研究力をさらに磨く人も、社会に出る人も、北海道教育大学で学んだことに誇りを持って生きていって欲しいと思います。
想定外の新型コロナウイルス感染症の影響を受けた皆さんにとっては、「卒業?修了おめでとう」と言われても、どこか腑に落ちないものを感じているかもしれません。私はと言えば、皆さんとは日頃直接的な接点はほとんどありませんが、このコロナ禍の中で、思いがけず、皆さんが地域に認められ、受け入れられ、愛されていることを教えられました。新型コロナウイルスの感染拡大が激しさを増し、全国的にも学生の経済的困難が伝えられていた頃、食品や生活必需品、現金をそれぞれのキャンパスに直接届けてくれた近隣住民の方々がたくさんいました。この心温まる出来事を知って、地域の皆様に深い感謝の気持ちが湧いてくると共に、これは皆さんと皆さんの指導に当たってこられた先生方の、これまでの様々な活動や努力の賜であり、また、皆さんの将来を見据える親心と励ましの心から生まれたものだと気付かされました。
そのような出来事と皆さんの頑張りを心に刻みながら、改めて心から「卒業?修了おめでとう」と皆さんに言いたいと思います。
「新型コロナウイルス感染症」。やはりこの話題を避けて通ることができないような気がします。皆さんもこの名前を口にしたら、色々と言いたくなることがあるのではないでしょうか。先日、皆さんの気持ちを代弁しているのではないかと思える投稿に目が止まりました。「新型コロナの流行で、時間が『止まった』」と書いた大学4年生の投稿です。「サークル活動はできずに引退、飲食店のアルバイトは休業、留学も断念」とあり、「この4月、(中略)悔しさと怒りと絶望をポケットに詰め、我慢とマスクとパソコンだらけの思い出を両手に抱えて歩き出す。」とのやりきれない思いと、「私の人生はこれから。春からまた、頑張りたい。」と、諦めきれない気持ちを押し込めながら前を向く決意を表明していました。共感できる人、多少思いを異にする人、もっともっと言うことがあるじゃないかとこれでは不満な人、人それぞれ様々な感慨を覚えるかもしれませんが、「自分の気持ちを代弁している部分は確かにある」と感じることができるのではないでしょうか。
もう一つ、コロナ禍におけるオンライン授業との関連で考えさせられる調査がありました。「PROGテスト」という、社会において一般的に必要とされる能力に関する大学生の調査です。大学1年次と3年次にそれぞれテストを受け、それらの能力の伸びを調べます。これを、大学で2018、19、20年と学んだ学生と、2019、20、21年と、3年間学んだ学生とを比較したものです。後者はまさにコロナ禍に巻き込まれた学生であり、この2万556人の結果を見ると、「課題発見」「実践」「計画立案」の各力については、コロナ禍前の学生に比べるといくらか低い程度ではあったものの、一定の伸びが認められる一方で、「行動持続力」「協働力」「親和力」「統率力」については、コロナ禍前の学生では伸びていたのに、コロナ禍に巻き込まれた学生では逆に低下していました。この調査を行った研究員は、「オンラインに変わってから、学生同士の議論を伴うグループワークが減少したことと、コロナ禍による活動制限が影響したのではないか」と分析していました。
関連して、ある脳研究者による実験も新聞で知りました。学生5人を一グループにして、対面とオンラインで会話してもらい、脳の活動を測定します。対面で顔を見ながら会話しているときには、脳反応の周波数が同期するのに、オンラインではそれが一切見られないそうです。同期しないことの理由の一つが「視線がずれていること」だと述べています。「脳活動が同期しないということは、オンラインで情報は伝達できているが、脳にとってはコミュニケーションになっておらず、感情が共感していない、つまり、相手と心がつながっていないことを意味する」、と説明しています。
この共感のなさ、コミュニケーション不全になっていることが、先の「協働力」「親和力」の形成にも影響を及ぼしているとすれば、今後、オンラインに頼らざるを得ない状況が続く限り、その在り方を工夫しなくてはなりません。ただ、そのためにはもう少し専門家の情報が必要です。
本学では対面とオンラインを組み合わせた対応が多かったと聞いていますので、皆さんにとって大きな悪影響がないことを願っています。
さて、皆さんがこれから生きていく世界では、教員?公務員?民間のいずれの職に就こうと、SDGsやカーボンニュートラルといった、地球と人類の存続そのものに関わる複合的な問題に、どんな形にせよ関わりを持ちながら生きていかざるを得ません。個人や、組織がそれぞれの立場で、またこのグローバル社会の中で何ができるかを考え、多様な考えを突き合わせながら最善の策を選択し、それを国の政策として反映させる道を模索しながら国際的な協調の在り方にも思いを致し、この地球を将来に向けて守っていく必要があると思います。
人という生き物は、大きな群れをつくり、知識や経験を皆で共有し、またそれを次の世代に伝えながら発展を遂げてきました。その過程で、複雑で難しいことは、それを身につけた人が手取り足取り教えることを原点に、教育というシステムを作り上げて社会を繁栄させてきました。集団は血縁者だけではありません。そこでは、人が人を思いやる心や共感する心、協調しようとする心、怒りの感情を抑える心の働きを進化の過程で獲得できたからこそ今の繁栄につながりました。この人間が持つ良さを今回のコロナ禍の中で失ってはならないと思います。皆さんには、正しい情報を自ら理解?判断し、人が進化の過程で獲得してきた良さを将来に引き継ぎ、争いのない平和な文化的環境を維持しながら、これからの社会を牽引していってもらいたいと願っています。
最後になりますが、後援会及び同窓会の会員の皆様、また経営協議会委員の皆様、地域住民の皆様、そして北海道教育大学基金へご寄付をいただいた多くの寄付者の方々には大変感謝申し上げます。様々な面で本学並びに学生の成長を支えていただきました。
卒業?修了される皆さんも、その方々への感謝の気持ちを忘れずこれからの人生を送ってください。学び直したいと思ったとき、後輩のことが気になったとき、一回り大きくなった自分を先生に見てもらいたいと思ったとき、いつでも大学に来てください。
皆さんの活躍を期待しています。
令和4年3月15日
北海道教育大学長
蛇 穴 治 夫
北海道教育大学長
蛇 穴 治 夫